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サプライチェーンにおける人権

シスコは、サプライチェーンで働く人たちを含め、シスコが事業を展開しているあらゆる場所で、すべての人の人権を守り尊重することに長年取り組んでいます。

シスコは、すべての人々の人権を守り尊重することに長年取り組んでいます。シスコは、人権に対する影響を把握して定量化するとともに、リスクを軽減し、人々とコミュニティの機会を最大化するよう努めています。このような人権への専心は、シスコのデューデリジェンスシステムに組み込まれています。このシステムは、シスコの人権に関するグローバルポリシー国連のビジネスと人権に関する指導原則(UNGP)、責任ある企業行動のための OECD デューデリジェンス ガイドラインに準拠しています。

シスコは、シスコとの取引に際して、Responsible Business Alliance(RBA)の行動規範を遵守することをサプライヤに求めています。この規範では特に、強制労働の使用を禁止しています。さらに、サプライヤに対して、規範にある要求事項を自社が利用するサプライヤやサプライチェーンに対しても要求するよう義務付けています。

シスコは、この ESG ハブModern Slavery Statement の中でデューデリジェンスプロセスの概要を示し、シスコの行動規範に対する不適合(強制労働に関するものを含む)の特定、軽減、是正のためにシスコが取った対応の結果を毎年「サプライヤ監査の結果」の中で公表しています。シスコの Supplier Code of Conduct またはサプライヤ倫理綱領に違反している可能性を認識した場合は、シスコは人権への影響に対する調査や評価を行い、軽減と是正のための措置を講じます。実施した措置の具体例を以下に示します。問題に対するサプライヤとの取り組みが満足いくものでない場合、そのサプライヤとの関係を解消することがあります。

サプライヤに対して直接影響力を行使するだけでなく、RBA や、責任ある労働イニシアチブ(Responsible Labor Initiative)および責任ある鉱物イニシアチブ(Responsible Minerals Initiative)を通じて同業他社と協力します。これらのイニシアチブは、グローバルサプライチェーンにおいて弱い立場にある労働者の権利の保護を推進するもので、複数の業界やステークホルダが参加しています。これらの業界イニシアチブにシスコが参加することで、適正評価と必要に応じた是正措置に関して、産業界全体で一貫性のある期待を共有することができます。

また、シスコは必須のトレーニングモジュールを通じて、サプライチェーンのワークフォースに人権の重要性を教えています。このモジュールでは、シスコが人権に関するコミットメントを遂行する上で従業員に期待している役割について、従業員の意識向上と理解を図っています。サプライチェーンの従業員は、コンテンツと試験を通じて、Supplier Code of Conduct の主要な要素と、この方針に従って責任を果たすようサプライヤを指導する役割について学びます。また、強制労働や児童労働などの重大なリスクの兆候に気付く方法、シスコの方針に違反している恐れがある場合に報告する方法も学びます。

詳しく述べると、シスコの人権に関するグローバルポリシービジネス行動規範Responsible Minerals Policy はシスコの事業指針であり、一方、シスコのサプライヤ倫理綱領 Supplier Code of Conduct はシスコのサプライチェーンで働く人々の人権を守るというシスコの公約を反映しています。

雇用の自由選択

いかなる種類の強制労働にも服さないという労働者の権利を守ることがシスコの Supplier Code of Conduct に織り込まれています。シスコの Supplier Code of Conduct は、ILO の強制労働指標(ILO Indicators of Forced Labour)に沿ったものであり、サプライヤの拠点で行動規範への適合性を評価する際には、採用時の詐欺、身分証明書の保持、賃金の差し押さえ、負債による束縛、虐待的な環境、移動の制限などの指標が調査されます。負債による束縛がもたらす強制労働のリスクを最小限に抑えるために、シスコは事業を展開するすべての地域で RBA 手数料の定義(RBA Definition of Fees)の方針を適用しています。この方針では、現地の法律で認められている場合であっても、労働者が採用、採用の継続、退職のために手数料を支払うことがあってはならないと規定されています。シスコは、UNGP に沿って、強制労働の状態を招く可能性のあるリスクを軽減し、そのような状態にある労働者が受けた被害の救済をサプライヤに求めています。強制労働のリスクに対処するためのシスコのプロセスの概要については、奴隷制および人身売買の防止に関するシスコのステートメントを参照してください。

2022 年度中も、サプライヤの監査の結果、雇用の自由選択に関する Supplier Code of Conduct の期待に反する不適合が明らかになりました。強制労働または債務労働の恐れがあることを示す不適合でした。これらのサプライヤ不適合が発生するのは、労働者が採用に関連する手数料を支払う場合です。1 回限りの少額の健康診断料や、高額の採用手数料などがこれに該当します。雇用の自由選択については、労働者が月給の 5% 未満に相当する 1 回限りの健康診断料を支払い、雇用開始後に払い戻された事例が引き続き大部分を占めています。シスコのチームはサプライヤと協力して、雇用者が医療提供者に健康診断料を支払うモデルを開発しました。このようにすれば、従業員は払い戻しを受ける必要がなくなります。

人材あっせん業者が本国出国前や入国時に外国人移民労働者に手数料を課すことが合法である国については、強制労働の一種である債務労働のリスクが存在することをシスコが確認する事例が続いています。これらの事例では、外国人移民労働者は、総賃金 1 ヵ月分以上に相当する過剰なあっせん手数料を支払っていました。労働者は、借金やあっせん業者への過剰な手数料を返済するために働かざるを得ない場合、借金に縛られることになります。通常のプロセスの一環として、債務労働のリスクに対し、シスコは主に次の 2 つの是正措置を講じます。サプライヤに対し以前に労働者に転嫁した採用手数料の負担を促すこと、影響を受けた労働者を直接救済して払い戻しを行うことです。一部の国では採用手数料が合法であるため、サプライヤとの解決に時間がかかる場合があり、シスコは取り組みを続けています。

禁止されている手数料請求の慣行が確認されたら、サプライヤと協力してさらに調査を行います。労働者が出発前および到着時にあっせん業者に支払った可能性のある手数料を特定する、給与から差し引かれた経常的な手数料を確認する、他の仲介業者や移動のために支払われた可能性がある手数料に関してサプライヤに労働者との対話を促す、といった対応を行います。サプライヤが採用を進めるために実際に要したコストと従業員に払い戻す金額を決定するには、徹底的な調査が重要です。是正措置の一環として、サプライヤは包括的な「手数料不要」の方針と手続きを受け入れ、採用プロセス中に候補者が手数料を支払わないようにする必要があります。方針が修正されると、労働者が理解できる言語で「手数料不要」の方針について労働者にトレーニングと周知を行います。このトレーニングは、候補者の採用プロセスにも組み込まれます。

RBA 監査に加えて、移民労働者や若年労働者といった弱い立場にある人たちを雇用するサプライヤに対して、的を絞った調査を実施しています。リスクに基づいて、調査対象とする拠点を選択します。たとえば、台湾やマレーシアなど、法的に採用手数料が認められている国のサプライヤが、Self-Assessment Questionnaires で外国人移民労働者が現場にいると回答していて、かつシスコがその拠点に対して現在 RBA 監査を実施していない、または実施予定がない場合、これらの拠点に対して、採用慣行と強制労働のデューデリジェンスについて尋ねる追加の調査を実施します。採用手数料を課す慣行が現地の法律で認められている場合でも、シスコはサプライヤに対して、「手数料なし」の方針を導入し、あっせん業者に対してデューデリジェンスを実施して、労働者の移動の自由を確保するためのプロセスを構築することを明確に要求します。

2022 年度の取り組みでは、外国人労働者や派遣労働者に関するリスクが確認された 6 つの拠点を調査しました。そのうち 4 つは規範に適合していましたが、2 つについては適合するためにさらなる取り組みが必要でした。1 つの拠点では、匿名の苦情を処理するためのメカニズムが存在しなかったため、サプライヤと協力して実装しました。もう 1 つの拠点については、長時間労働が行われていたことに加えて、緊急時への備えのプログラムが不十分であることが判明しました。この調査結果を踏まえて是正措置計画が開始され、現在進行中です。

2022 年度には、2,817 人の労働者に対して 170 万ドル以上の手数料を払い戻すことができました。これには、中国本土とフィリピンにおける小額の健康診断料の払い戻しと、台湾、マレーシア、日本、シンガポールにおける採用手数料の払い戻しが含まれます。

上記に加えて、シスコは 2022 年度に RBA と提携し、外国人移民労働者が採用手数料を支払うことを許可していた台湾の 4 つのサプライヤに対して RBA アドバイザリサービスを提供するよう依頼しました。RBA はシスコに代わって、労働者の出身国と目的国の両方の関連あっせん業者、現場の人事管理チーム、影響を受けた労働者にインタビューを行います。これらのインタビューは、採用プロセス中に労働者に課せられた条件を明らかにすることに加えて、労働者が移動のどの時点でいくら支払ったのかを判断するのに役立ちます。次に、サプライヤは RBA の担当者と協力して、払い戻し計画を作成し、実施します。このプロセスの最後に、影響を受けた労働者の条件が適切に是正されたことを検証するため、第三者機関による監査が実施されます。

過去 1 年の間に、RBA 責任ある労働イニシアチブ(Responsible Labor Initiative、RLI)に参加したことで、サプライヤと連携して強制労働リスクに対処する能力が向上しました。シスコは、RLI 強制労働トレーニングセミナーに参加するサプライヤ 5 社の費用を負担しました。シスコのチームは、これらのトレーニングを活用してサプライヤが徹底した手数料調査を実施できるように支援し、手数料チェックリストやガイダンス質問票などのツールやリソースを提供しました。労働移民回廊データベース(Labor Migration Corridor Database)は、労働者が移動中に支払った可能性のある手数料を把握するのに有用でした。

若年労働者の保護

シスコのサプライチェーンにおいて若年労働者の権利を保護することは、重要な優先事項です。18 歳未満の労働が法的に認められている法域内で 16 ~ 18 歳の労働者を保護するためのシスコの基準は、させてはならない仕事の種類を含め、Juvenile Labor Policy and Expectations に概説されています。2022 年度は、児童労働者(15 歳以下の労働者)の事例は確認されていません。ただし、シスコは、若年労働者(18 歳未満)を時間外労働または夜勤に割り当てているサプライヤをいくつか特定しました。また、一部のケースでは、サプライヤが児童労働の回避と是正に関して不適切な方針を取っていました(シスコの監査について詳しくは、サプライチェーンのケーススタディのページをご覧ください)。これらの事例では、シスコはサプライヤに対し、労働者に健康上のリスクをもたらす方針または慣行を停止し、労働者の管理がシスコの期待に沿うよう手順を見直すことを促します。

倫理的な資源調達

鉱物の調達には、健康と安全、強制労働と児童労働、環境悪化、地域紛争への影響など、多くの面でリスクが伴います。シスコはこれらのリスクを認識していて、武力紛争や人権侵害に寄与することなく、タンタル、スズ、タングステン、金(3TG)、コバルトなどの鉱物を調達するための堅牢なデューデリジェンスプロセスを実施しています。

シスコの目標は、サプライヤと協力し、人権、ビジネス倫理、労働、安全衛生慣行、環境への責任に関するシスコの価値観に沿って鉱物を調達することです。このアプローチには、紛争地域および高リスク地域(CAHRA)からの責任ある調達が含まれます。シスコは、鉱山、または鉱物を処理する製錬所や精製所から鉱物を直接調達していないため、倫理的かつ責任ある方法で鉱物を調達するために、第三者機関の基準(精錬所監査プロセス(Responsible Minerals Assurance Process、RMAP)、その他の相互承認された基準など)に依拠しています。シスコは、リスクベースの評価の一環としてこの基準を使用して、調達元が低リスク(業界では以前「コンフリクトフリー」と呼ばれていました)であるかどうかを判断しています。

国連ビジネスと人権指導原則(UNGP)に基づくシスコの全面的なコミットメントは Responsible Minerals Policy に表現されています。シスコの 2021 年 Conflict Minerals Report が 2022 年 5 月に発行され、当社のデューデリジェンス活動と OECD Due Diligence Guidance for Responsible Supply Chains of Minerals from Conflict-Affected and High-Risk Areas との整合性について詳しく説明しています。レポートには、2021 年の活動成果の詳細も記載されています。1

1 紛争鉱物は、ドッド・フランク法第 1502 条において米国証券取引委員会によって定義され、すず石、コロンバイトタンタライト、金、鉄マンガン重石、またはそれらの派生物、または国務長官が該当国で紛争資金源になっているとして指定したその他の鉱物またはそれらの派生物を指します。該当国には、コンゴ民主共和国(DRC)や隣接国を含みます。

リスク特定と業界連携を通じた責任ある 3TG 調達

シスコは 3TG を製錬所や精製所(SOR)から直接購入しないため、サプライヤと協力して、責任ある鉱物調達に関するデューデリジェンスを実施します。また、業界全体で協力して、デューデリジェンスをサポートするツールと実施方法を開発しています。シスコは、責任ある鉱物イニシアチブ(Responsible Minerals Initiative、RMI)の Conflict Minerals Reporting Template(CMRT)を使用してサプライヤに調査を行い、報告された SOR を確認します。また、サプライヤのサプライチェーンに働きかけて調達先を RMI の RMAP に準拠した SOR に変更するようサプライヤに依頼します。

シスコはサプライヤの CMRT を分析した後、確認されたリスクに対処します。場合によっては、RMAP に適合しない SOR をサプライチェーンから排除するようサプライヤに働きかけることもあります。シスコの高リスクの定義に当てはまる SOR には最優先で対処します。サプライチェーン人権ガバナンス委員会の場で、シスコのサプライチェーンリーダーに進捗状況を定期的に報告しています。サプライヤがシスコの Responsible Minerals Policy に従う意思がない場合、グローバルサプライチェーンを担当する経営層にエスカレーションし、そのサプライヤをシスコのサプライチェーンから排除することもあります。2021 年(暦年)に、対象サプライヤから報告された 3TG の SOR の 83% が、第三者機関による監査プログラムで適合とされたか監査中でした。さらに 8% が 100% リサイクルの原料を使用しているか、コンゴ民主共和国(DRC)と大湖沼地域以外から供給を受けていました。3TG に関するその他の結果は、2021 Conflict Minerals Report(暦年)に記載されています。

2022 年度、シスコは RMI への積極的な参加を通じて、同業他社やその他のステークホルダとコラボレーションを継続しました。シスコは、RMI において以下のチームに参加しています。RMI Smelter Engagement Team では、RMAP への参加を促す活動をしています。RMI Mining Engagement Team では、上流の鉱山会社からのデータを下流の製造業者と共有する方法を検討しています。RMI Artisanal and Small-scale Mining(ASM)Team では、人力小規模採掘でのパフォーマンスの改善やリスクの軽減に取り組んでいます。これらのグループへの関与を深め、シスコの鉱物調達戦略に関連する他の問題に取り組んでいくことになると考えています。

2022 年度も、シスコは RMI の監査基金に資金を提供しました。この基金は、RMAP プログラムへの参加を促すために重要な役割を果たしています。シスコが資金を提供する目的は、SOR が高いレベルで RMAP に参加するよう促すとともに、責任ある調達のデューデリジェンスにかかる費用を相殺することです。

シスコは、European Partnership for Responsible Minerals(EPRM)のメンバーでもあります。これは、さまざまなステークホルダによるパートナーシップで、CAHRA で責任ある採掘を実践する鉱山の数を増やしていくことを目的としています。シスコは、サプライチェーンの中核の一員として関与し、Upstream Working Group などに参加しています。過去 1 年にわたって、このワーキンググループでは、責任ある鉱物調達を推進する域内のプロジェクトを支援する最適な方法を見いだすために調査を実施しました。

シスコが直接支援している EPRM 出資のプロジェクトの 1 つに Scalable Trade in Artisanal Gold(STAG)があります。鉱物資源を活用して生計を向上させるブルキナファソの採掘者の試みを支援するプロジェクトです。STAG は、責任を持って調達された人力採掘の金を市場に供給する商業化可能なルートを確立することを目指しています。その第一歩は、参加している採掘現場に責任ある採掘のための基準を適用することで実現されました。これにより、人権と環境を保護するという業界の期待に沿って金が採掘されるようになりました。パートナーの RESOLVE および RMI によるレビューの後で、この基準は拡張され、現地の基準と国際的な基準が盛り込まれました。ASM 金資源として認証するために、この基準の適用状況が RMAP のようなデューデリジェンスシステムによって確認されます。これによって、ASM 採掘者は、責任ある採掘によって得た金を扱うグローバル市場にアクセスできるようになります。

STAG はまた、ブルキナファソのダノ地域における現場での金取引事業の立ち上げに向けて取り組んでいます。これにより、ASM 採掘者が国際的な責任ある金購入市場にアクセスできるようになります。パートナーである Artisanal Gold Council(AGC)のチームは、プロジェクトサイトで ASM サプライチェーンに対する 2 つのベースライン評価を実施し、ダノ地域の金価格データベースを構築しました。これらの評価は、ASM 採掘者が正式な市場に参加することを奨励するためのインセンティブモデルの開発に利用されます。

シスコは、資金面での支援に加えて、STAG の Downstream Progressive Due Diligence Lab にも参加しています。このラボでは、ASM 調達と、サプライチェーンの中流や下流にいる企業でのデューデリジェンスを推進しています。EPRM、RMI、RESOLVE、Artisanal Gold Council、AG Sarl に加えて、このプロジェクトに参加できることはシスコにとって光栄です。

「紛争鉱物」と DRC を超えて

鉱物のグローバルサプライチェーンにおける人権に関する説明責任と透明性に注目が集まっています。2022 年度、シスコは引き続き RMI の Cobalt Reporting Template(CRT)を使用して、リチウムイオン電池サプライヤのコバルト調達先について調査を実施しました。2021 年度は、これらのサプライヤの 100% が調査に回答しました。2022 年度はリスクベースのアプローチを改善するため、コバルトが含まれている可能性のあるその他の部品も対象に含めるよう調査範囲を拡大しました。67% のサプライヤが回答し、報告されたコバルト精製所の 62% が RMAP の標準に適合しているか監査中でした。シスコはこの調査結果を使用して年間を通じてデューデリジェンスを実施し、リスクの監視と全体的な RMAP 適合率の向上を図ります。コバルトサプライチェーンのリスクに対する可視性を高め、将来の調査に対するサプライヤの回答率を高めるため、2023 年度のキャンペーンに先立ってコバルトを Responsible Minerals Policy に追加し、新たに対象となったサプライヤへの働きかけを開始しました。シスコは引き続き不適合の製錬所および精製所に働きかけ、RMAP への参加を奨励しています。

サプライチェーンを通じた透明性の向上

2022 年度、シスコは、鉱山監視プログラムである RCS Global Better Mining プログラムに資金を提供しました。このプログラムにより、Artisanal and Small-scale Mining(ASM)組織と下流の顧客が ESG に関する重要な洞察を得ることができます。Better Mining プログラムにより、コンゴ民主共和国(DRC)およびルワンダにある 48 か所の ASM 採掘現場での労働条件に関する理解が深まりました。このプログラムでは、2021 年 4 月から 2022 年 3 月の間に、ASM 採掘現場で 2,000 件以上のインシデントとリスクを特定しました。インシデントの種類には、労働条件と安全、環境、セキュリティ、人権、合法性に関するリスクなどがあります。このプログラムでは、フェンスの設置、感作トレーニング、標識の改善、立坑の安全対策など、特定されたリスクを軽減するための最善の措置を定義した 1,000 の是正措置計画が推奨されました。現地のステークホルダがこれらの措置を実施することで、採掘現場における直接的な改善が促進されます。今後、この取り組みから収集されたデータから、採掘現場におけるリスクを軽減するためのヒントが継続的に得られることを期待しています。また、鉱山コミュニティにプラスの影響を与えるための戦略について、RMI などの業界グループが知見を得ることが期待されます。

労働者の健康と安全の保護

シスコ製品の製造には化学物質の使用が必要な場合があり、その中には人間の健康や環境に有害なものもあります。シスコは 2021 年度に、Chemical Management Expectations for Suppliers(化学物質管理についてのサプライヤへの期待事項)を制定しました。この方針の目的は、有害な化学物質へのばく露から労働者と環境を保護することです。

シスコは、Clean Electronics Production Network(CEPN)および Responsible Business Alliance(RBA)の Chemical Management Workgroup のメンバーです。そのため、CEPN Priority Chemicals List にシスコの方針とデューデリジェンスのアプローチを準拠させています。このリストには、RBA Industry Focus Process Chemical List の内容が反映されています。

2022 年度も引き続き、シスコはサプライヤ拠点における有害化学物質の取り扱いを調査しました。また、追加で 20 のサプライヤ拠点に Process Chemical Data Collection(PCDC)調査を実施してもらいました。これらの調査では、サプライヤに対して、シスコ製品の部品の製造に使用されている化学物質を特定するよう依頼しました。このプロセスの一環として、シスコと第三者のコンサルティング会社は、500 を超える化学製品のリスクを評価しました。次に、サプライヤと協力して、安全でない化学物質を排除するか、より安全な代替品に置き換えました。PCDC 調査では、残りの 17 社のサプライヤが、化学物質管理についてのサプライヤへの期待事項の方針に概説されている 9 つの優先化学物質のいずれも使用していないことが明らかになりました。

2022 年度、シスコは 6 社のサプライヤと協力して、より安全な代替品を導入し、製造、洗浄、メンテナンスの各プロセスにおけるベンゼン(71-43-2)、n-ヘキサン(110-54-3)、n-プロピルブロミド(106-94-5)、メチルアルコール(67-56-1)などの危険な化学物質の使用を停止しました。この取り組みは PCDC 調査とは別個に行いました。

化学物質の排除と代替により、危険を効果的に減らすことができます。シスコは CEPN Priority Chemicals List に従い、サプライヤに対して 2024 年 3 月までに表 1 にリストされている化学成分の使用を停止することを要求しています(出典:化学物質管理についてのサプライヤへの期待事項)

表 1:製造プロセスでの使用を段階的に廃止する優先化学物質
化学成分 CAS 番号
化学成分:ベンゼン CAS 番号:71-43-2
化学成分:n-プロピルブロミド(nPB) CAS 番号:106-94-5
化学成分:塩化メチレン CAS 番号:75-09-2
化学成分:メタノール CAS 番号:67-56-1
化学成分:n-ヘキサン CAS 番号:110-54-3
化学成分:N-メチルピロリドン(NMP)* CAS 番号:872-50-4
化学成分:テトラクロロエチレン CAS 番号:127-18-4
化学成分:トルエン CAS 番号:108-88-3
化学成分:トリクロロエチレン CAS 番号:79-01-6
製造過程で洗浄剤または溶剤に上記成分を使用してはなりません。混合物中の濃度は、GHS 報告値である 0.1% 未満 または 1000 ppm 未満でなければなりません。
*フォトレジスト剥離での条件付き使用が許可されています

サプライヤは、効果的な設計を通じて表 1 の成分の使用を排除するか、より安全な代替品に置き換える必要があります。シスコはサプライヤに対し、化学物質を置き換えるにあたって潜在的危険性が高い化学物質に移行することを避けるため、GreenScreen® for Safer Chemicals などの危険性評価フレームワークを利用するとともに、IC2 Hazard Assessment Database などのデータベースを参照することを推奨しています。

この件に関しては、Cisco Controlled Substances Specification Revision B6 も適用されます。

COVID-19 に起因する混乱が、依然としてサプライチェーンの運営に影響を与えています。シスコはこれらの課題に取り組み続け、COVID-19 に対する復元力と応答性を備えたサプライチェーンを設計しました。サプライチェーン内の労働者の安全と健康は引き続き、シスコの最大の懸案事項となっています。

労働者に発言の機会を与え、ステークホルダの参画を促す

シスコでは、サプライチェーンで働く労働者のライツホルダ(人権の主体)としての地位向上と尊厳を持って働ける環境の実現に向けた新しい方法を常に模索しています。シスコは Supplier Code of Conduct の一環として、常に労働者に労働条件に関する発言を促してきましたが、労働者とのコミュニケーションや労働者間のコミュニケーションを円滑にすることは、パンデミックの状況下でますます重要になっています。シスコが労働者からの苦情にどのように対応しているかについての詳細をご覧ください。

2021 年度を通じて、シスコの取り組みにライツホルダ(人権の主体)の視点を効果的に取り入れるための措置を講じました。EPRM、CEPN、Alliance for Water Stewardship(AWS)、RLI などのさまざまなステークホルダが進めるイニシアチブに参加することで、集団的な行動によってライツホルダのために組織的な影響力を行使することができます。SAI との連携や STAG などのプロジェクトへの参画により、シスコはサプライチェーン内のライツホルダの生活の向上につながるより直接的な影響力を得たいと考えています。他者と連携することで、ベストプラクティスを学び共有することができます。これによって、シスコのアプローチを見直し、人権に関する優先事項にいっそう効果的に取り組むことができます。シスコが連携している組織の詳細については、下の表を参照してください。

シスコの取り組みにライツホルダの視点を取り入れることで、意図した影響を与える可能性が高くなると考えています。2020 年度には、ビジネスや人権に詳しいコンサルタント会社の協力を得て、ステークホルダの参画に関する戦略を策定しました。サプライチェーンにおける人権の優先事項の解決を後押しすることを狙っています。2021 年度には、この取り組みを活用して、ステークホルダマッピングのプロセスで見いだした組織に非公式に意見を聞くことができました。シスコは 20 を超える非政府組織や専門コンサルタントと協力して、現在認識している人権の優先事項について経過やリスク、機会をモニタリングしました。強制労働、労働者の安全衛生、責任ある鉱物調達、環境スチュワードシップのイニシアチブなどがその対象です。これにより、広がりを見せるパンデミックなど世の中の動向にシスコの戦略と活動を柔軟に適応させることが可能になりました。これらの取り組みのおかげで、新たに発生する問題に対処するためのアプローチをシスコが見いだしたり開発したりすることも容易になりました。

2022 年度、シスコは内部ワークショップを開き、翌年度に向けて弱い立場にあるグループとライツホルダの参画をさらに促進する方法を検討しました。このワークショップでは、ライツホルダとの協議や弱い立場にあるグループに対する取り組みを強化するために、サプライチェーンとシスコのその他の事業との間でコラボレーションの機会を増やすことが提案されました。サプライチェーンとシスコのその他の事業との間で行われている業務の連携方法を改善することで、ライツホルダとの協議や弱い立場にあるグループへの配慮を、シスコの業務全体でより適切に統合できることが明らかになりました。このワークショップの結果、シスコのサプライチェーンにおけるライツホルダの位置づけと、2023 年度の戦略をさらに発展させるための基礎となる一連の重要な行動を把握することができました。

シスコが参加しているサプライチェーンのサステナビリティに関するイニシアチブと組織
組織 連携している分野
組織:Responsible Business Alliance(RBA) 連携している分野:RBA の創立者であり、正会員でもあるシスコは、RBA に参加している各社と協力して、業界とサプライチェーン全体にベストプラクティスを広めるよう努めています。
組織:RBA VAP Working Group 連携している分野:シスコは、RBA の VAP Working Group に参加しています。このグループは RBA Validated Assessment Program の進捗や実施を監視する企業会員から構成されています。
組織:CDP 連携している分野:シスコは、CDP の情報開示制度に参加しています。ここでシスコの取り組みを報告するとともに、サプライチェーンでの情報開示を推進しています。
組織:責任ある鉱物イニシアチブ(Responsive Minerals Initiative、RMI) 連携している分野:シスコは RMI で積極的な活動を行っています。参加各社と協力して、責任ある鉱物調達に関する懸念事項への取り組みや新たな解決策の立案に取り組んでいます。
組織:責任ある労働イニシアチブ(Responsible Labor Initiative、RLI) 連携している分野:シスコは RLI で積極的な活動を行っています。さまざまなステークホルダが参加するこのイニシアチブは、グローバルサプライチェーンにおいて強制労働の懸念がある労働者の権利を守ることに焦点を当てています。
組織:Institute of Public and Environmental Affairs(IPE) 連携している分野:シスコは IPE と継続的なパートナーシップを結んでいます。中国本土のサプライヤ拠点とともに環境リスクの防止、軽減、回復に取り組んでいます。
組織:European Partnership for Responsible Minerals(EPRM) 連携している分野:シスコは EPRM のメンバーです。複数のステークホルダが参加するこのパートナーシップは、採掘現場、中流企業、下流企業の支援と、生産と調達の連携強化を通じて、責任ある鉱物の利用拡大を目指しています。
組織:Clean Electronics Production Network(CEPN) 連携している分野:シスコは CEPN の正会員です。複数のステークホルダが参加するこのネットワークは、電子機器の製造中に労働者が有害な化学物質にばく露される問題に取り組んでいます。デューデリジェンスに用いるツールの開発と、サプライチェーンに広めるためのベストプラクティスの見極めに努めています。
組織:RBA Environmental Sustainability Working Group(ESWG) 連携している分野:シスコは、RBA ESWG に参加している各社と協力してサプライチェーンのサステナビリティを高めるツールを開発し普及させています。
組織:Alliance for Water Stewardship(AWS) 連携している分野:シスコは AWS International Water Stewardship Standard を採用しました。これは、サプライチェーンにおける水資源スチュワードシップの評価と推進を目的としています。
組織:RBA Chemical Management Taskforce 連携している分野:シスコは、電子機器のサプライチェーンにおいて化学物資を適切に管理し、化学物質へのばく露から労働者を保護することを目的にツールやリソースの採用と普及を進めます。
組織:Scalable Trade for Artisanal Gold(STAG) 連携している分野:シスコは、業種にまたがるこのイニシアチブを支援しています。人力採掘の金が電子機器のサプライチェーンに入る安全で責任あるルートを開発することが目的です。シスコはパートナーと協力しながら、採掘の基準を普及させ、下流企業の期待に応えつつ人力採掘者の生活を向上させることを目指しています。
組織:RBA Indirect Spend Working Group 連携している分野:シスコは他のメンバー企業と協力して、非製造業およびサービスのサプライチェーンにおける社会的リスクと環境的リスクを特定、対処、管理します。

労働時間と休日の管理

労働時間と休日の問題は電子業界のサプライチェーンに慢性的に存在する問題であり、監査で不適合になる頻度が最も高いカテゴリです。シスコはサプライヤと協力して、CAP をレビューする過程で根本原因を徹底的に究明し、労務管理の仕組みを変革するとともに長期的な改善計画の進捗を監視します。円滑に進捗させるためには、サプライヤが以下の対策を講じる時間を織り込む必要があります。

  • 従業員の平均労働時間を削減するために従業員を新規に雇用する
  • 従業員を多能工化し資格を付与することで、労働力が不足している職務へのローテンションを可能にする

シスコは、最優先の不適合が重大な不適合に軽減されるまで、サプライヤの進捗を毎月追跡します。不適合をクローズできると判断する前に、シスコは平均労働時間の最低 3 ヵ月分のデータについて文書による確認を実施します。シスコは、労働時間に関する不適合を指摘されているサプライヤとともに、合理的な制限内に勤務時間を維持できるか評価を実施しています。サプライヤには、時間外労働は任意で行うことを徹底することと、ストレスや過労を防ぐために労働時間を監視することを求めています。また、パンデミックの影響を受けた際に作業時間を適切に管理できるよう、復旧計画を文書化することも求めています。パンデミックが広がりを見せているため、この問題は継続的に監視する予定です。

2022 年度の終わりに、シスコは根強い労働時間の不適合を軽減する取り組みから学んだことを活かし、2023 年度中に同様の問題が発生している拠点にベストプラクティスを実装します。